公共労速報259

2017年人事院勧告

4年連続プラス勧告も生活改善ならず

月例給0.15%、一時金0.1月分改善
看護師初任給1,200円引上げ

 人事院は今月8日、国家公務員給与に関し、民間給与との比較で「平均631円、0.15%」の月例給改定と、一時金0.10月引上げなどを柱とした勧告・報告を行いました。
4年連続引上げ しかし物価上昇に追いつかず
 4年連続の引上げ勧告で、初任給1,000円引上げ、若年層を同程度改善し、それ以降の号俸については400円の引上げを基本としており、再任用を含むすべての号俸での改善です。また医師と看護師の初任給を1,200円引上げ、各号俸の引上げ幅も一般職より若干の上乗せとなりました。 これは、全産業より低い賃金水準にある医療・介護職の大幅賃上げを掲げた春闘をはじめとした運動の反映です。
 しかし、一方、消費者物価指数が前年同月比でみて4月以降8月まで連続して0.4%上昇しているため実質賃金ではマイナスに。 生活改善にはほど遠い引き上げ幅です。
現給保障額を受ける中高年層に配慮なし
 また、「給与制度の総合的見直し」により、多くの中高年層は現給保障額を受けています。 わずか400円の引き上げでは、中高年層の多くは賃上げにつながりません。 さらに現給保障制額は来年3月に廃止となることから、現給保障額を受けている職員は来年4月には賃下げにもなります。
 医労連としてこのことも指摘し、中高年層の改定にも配慮するよう求めてきましたが、このことに全く応えていないことは、重大な問題です。
一時金 改善分は勤勉手当に
 一時金は、0.10月引き上げて4.40月としています。一時金も4年連続の引き上げとなりました。
 引き上げ分はすべて勤勉手当に配分するとしています。 現行の人事評価制度には不十分な点が多いまま、人事評価の結果を直接反映する勤勉手当を拡大していくことには問題があります。 今後も勤勉手当を拡大するというなら、評価の客観性・公正性について検証すべきです。
本年の給与勧告のポイント
@月例給0.15%引き上げ。ボーナスを0.1カ月引き上げて全額勤勉手当に配分。
A本府省業務調整手当引上げ
B若年層を中心に平成27年1月1日に抑制された昇給を回復

2017年人事院勧告

非常勤職員の労働条件について

 非常勤職員は同じ仕事内容でも、給与や待遇が正規職員と比べて低く、均等待遇や雇用の安定という点からも早急な改善が求められています。
 人事院はこの7月に、6ヵ月以上任期のある非常勤職員に期末手当および勤勉手当を支給する努力義務を設けた給与指針に改正しました。 今回の勧告では、この指針の実施を各府省に要請・指導するとしています。
 給与指針では、非常勤職員の給与は属する職務の級の初号俸を基礎に決定するとされているため、 今回の勧告で初任給が1,000円改定されることにより、このベースアップは非常勤職員も受けるべきものです。
 一方で、夏季休暇の新設や病休など無給休暇の有給化などの要求には人事院は応えていません。 「慶弔に係る休暇等について検討を進めていく」と述べるにとどまっております。
これは、検討内容は不明ですが、結婚休暇と6ヵ月以上勤続要件の忌引き休暇などを念頭においていると推察できます。

「人事院勧告って? 」
とっても大事!労働三権
 私たち労働者には、日本国憲法で労働三権、つまり団結権(労働組合をつくる権利)、 団体交渉権、争議権(ストライキをする権利)が認められています。
 この労働三権を行使することによりはじめて労働者は会社側と対等平等に立てるのです。
公務員の賃金決定のしくみ
 ところが、公務員の場合、この労働三権のうち全部または一部が制限されています。 労働三権が制限されてしまうと、仮にブラック企業状態でも職員は我慢せざるを得ません。
 そこで、一般職の国家公務員の賃金、処遇について、「人事院」という国の機関が、民間の給与や処遇を調査し、 「民間と格差のないように改善してね」と、内閣などに対して「勧告」し、 その「勧告」をふまえて内閣が国家公務員の賃金などを決定するというしくみがとられています。 これが「人事院勧告」と言って毎年8月くらいに出されます。
 国家公務員だけでない!「人事院勧告」は私たちの給料にも関係しています
 「人事院勧告」は民間の反映ですが、逆に私たち民間に影響も与えています。
 特に公立共済の病院は「国家公務員準拠」を建前にしていますので、給料表も国家公務員と同じものを用い、 現状では「人事院勧告」通りに給料表や一時金が決定されています。
 1965年には「夜勤は複数・平均月8日以内」「産後6ヵ月の夜勤免除」という勧告が出され、 その後公共労も理事者と「個人につき月8日以内」を努力する旨の覚書を結んでいます。
マイナス改定をさせない闘いをこれからも
 もちろん私たちは公務員ではありませんから、国家公務員がどうであろうと、労使の対等な交渉により賃金等を決定すべきです。
 人事院勧告でのプラス分は当然きちんと反映させ、逆にマイナス勧告でも、それを理由にした賃下げなど行わせないよう、 公共労はこれからも労働三権を行使して、健康で働き続けられる魅力ある職場つくりにがんばります!!